
ドヤ街の社会調査を続ける著者は、ある朝、寿町の労働センターの前で、奇妙な男に英語で話かけられる。彼の名は西川紀光(キミツ)。ドヤの部屋でギターを弾き、港湾労働で日銭を稼ぐ。膨大な量の読書で世界の思想とつながり、独特の哲学を紡いでいた。天才キミツの人生と哲学の書であり、22年にわたる2人の友情の記録。完全版では、聞き書き前のエピソード、聞き書き後のことや家族からの証言も加わった貴重な「一人民族誌」。
目次
紀光を紹介します
紀光という男/1995年の紀光/寿の哲学/港湾労働について/長男そして人生の罰/トムと紀光/再会
2007年、紀光の証言
テッポウで故郷へ/5歳が黄金時代/中学生のころ/自衛隊に入って/あほうだんす/港湾労働の良さ/天気が良くて/海の冒険譚/母の3回忌/アフォーダンスとオートポエーシス/寿のこと/コリン・ウィルソンについて/刑務所のこと、女のこと/イギリスの高校生へ/ホッファーについて/寝ると夢を見る/因果応報について
社会人類学から観た紀光
聞き書きの後のこと
2007~2011/寿町の変化/紀光の新生活/お姉さんの話/本ができた/紀光最後の日々/あとがき