「身体」特集を中心に、「観光しない京都」「水曜日は働かない」といったライフスタイルに根ざした提案や、「47都道府県再編計画」、東京・小金井の就労支援施設「ムジナの庭」ルポ、映画「ドライブ・マイ・カー」濱口竜介監督とコルク佐渡島庸平さんとの座談会、久保田寛子さんの版画などを掲載
執筆陣:
芦埜佑亮/飯田将茂/井上岳一/牛場潤一/上田唯人/宇野常寛/遠藤謙/緒方壽人/沖本ゆか/落合陽一/乙武洋匡/笠原俊一/久保田寛子/鞍田愛希子/鞍田崇/高坂友理恵/上妻世海/近藤那央/佐渡島庸平/消極性研究会(栗原一貴・西田健志・簗瀬洋平・渡邊恵太)/高山都/田口友子/田中みゆき/辻音里/苫野一徳/濱口竜介/福嶋亮大/藤井修平/藤嶋陽子/丸若裕俊/最上和子/吉田尚記
▼目次
[紀行文]観光しない京都2022
世界有数の観光都市である「京都」。でも、20代のころに7年間この街に暮らして、そしていまでも仕事でよく訪れる僕(宇野)はこう思います。「〈観光しない〉ほうが京都は楽しい」と。他の街からやってきて、そこに暮らした人間の目から見た京都という街の日常の魅力を、暮らすような旅の提案としてまとめました。
【特集】「身体」の現在
[座談会]身体論の現在──ケアと拡張身体のあいだで|牛場潤一×緒方壽人×笠原俊一×田中みゆき
近代的な五体満足主義から多様な身体の擁護へ──現代の身体はケアの現場を通じて、あるいは工学的な身体拡張を通じて、その多様性を確保しようとしています。そして、この多様に変化し得る身体を基準に社会を眺めたときに突き当たる問題たちについて、それぞれの現場から知恵を持ち寄って考えてみました。
[鼎談]思想としての義肢──OTOTAKE PROJECTの豊かな副産物について|遠藤謙×落合陽一×乙武洋匡
「乙武洋匡を歩かせたい」──落合陽一、遠藤謙などが結集してはじまった「OTOTAKE PROJECT」は、単に一人の「五体不満足」な人間を歩かせるという実験を超えて、その過程でたくさんの知見を産み落としています。工学的なアプローチではじめてケアできる「固有の障害」の発見、介助する/されるという関係性が産み落とす「二人で一つの疑似身体」のような体験、そして「かわいい」という基準で身体を見ることの豊かさ……。これは「歩く」という体験の再発見を通した、三人のクリエイターの創発の回顧録です。
[論考]藤井修平|マインドフルネスの身体技法はいかに受容されてきたか──仏教と心理学の関わりの歴史から考える
[論考]藤嶋陽子|凡庸な服は、いかに捉え得るか? ––私的な身体技法をめぐる試論的考察
[インタビュー]上妻世海|制作する身体をめぐって──運と誘惑と戯れながら
[対談]「もうひとつの眼」と「もうひとつの身体」はどう出会ったか|飯田将茂×最上和子
[座談会]消極的な人よ、身体を解放せよ──いや、そもそも身体なんていらない?|消極性研究会
[特別企画]47都道府県再編計画──日本列島(再)改造試論|井上岳一×宇野常寛×田口友子
「いま、暮らしているこの街は○○県にあるのだけれど、実は職場も買い物に行く街も隣の県にある」「同じ県だけれど山脈を挟んだ沿岸部は別の国だと思っている」とか、そういうことって意外とありませんか?
そんな素朴な疑問から「モノノメ」は「47都道府県再編計画」を提案します。市町村よりも大きくて、国よりも小さい。都道府県という「中くらいの」ものをより生活の実情や歴史や文化に即したものにしてみよう……そんなシミュレーションを通じて、この国の「地方」をもっと豊かな空間にしていく提案を試みます。
[ルポルタージュ]「ムジナの庭」では何が起きているのか
東京・小金井にある就労支援施設「ムジナの庭」。ここでは植物に触れること、手仕事をすること、人と触れ合い感情を表現することをつなげた心身のケアのプログラムが実践されています。このユニークな試みが行われる場所に編集部が実際に足を運び、一緒に手を動かしながら、主宰の鞍田愛希子さんと、パートナーの哲学者・鞍田崇さんにじっくり話をうかがいました。
【妄想企画】水曜日は働かない
「水曜日は働かない」──突然ですが、僕(宇野)は世界にそう提案したいと考えています。週の真ん中、水曜日が休みになると1年365日がすべて休日に隣接する……! この宇宙の真実に人類はもっと気づくべきだ。そう考えた僕はあらゆる手段を用いて、「水曜日は働かない」ことのメリットを訴えることにしました。そこに見えてきたのは、週休3日制導入の潮流とそのハードル、コロナ禍以降のリモートワークのメリットとデメリット、この国の「余暇」の文化の意外な弱点……。たくさんの課題を乗り越えて、「水曜日は働かない」世界の実現を模索します。
[マニフェスト]「水曜日は働かない」という提案|宇野常寛
[鼎談]「水曜日は働かない」という提案をめぐって|芦埜佑亮×高坂友理恵×辻音里
[コラム]「水曜日を働かない」ための働き方改革|坂本崇博
[特別鼎談]「劇映画的な身体」をめぐって──『ドライブ・マイ・カー』から考える|宇野常寛×佐渡島庸平×濱口竜介
「宇野さん、濱口と話してみない?」──佐渡島庸平の一通のメールから、この鼎談は生まれました。いま、世界に大きな衝撃を与えようとしている映画『ドライブ・マイ・カー』を素材に、現代の情報環境と劇映画の射程距離、言葉と身体、村上春樹と女性表象、ショットの内と外、演技の「文体」の問題……。1本の映画から汲み出せる思考を、とことん搾り取った議論です。
[論考]苫野一徳|社会構想のための哲学思考
[エッセイ]吉田尚記|現役アナウンサーがその目で見た #TOKYO2020
[創作]眠い町 作・小川未明/版画・久保田寛子
世界を旅する少年ケーが、どんな人でも眠ってしまうという不思議な町から辿った奇妙な運命とは? 近代日本を代表する児童文学作家・小川未明の物語と、注目のイラストレーター・久保田寛子の連作版画が出会う、時をこえたコラボレーションです。
【連載】
福嶋亮大|世界文学の制作 第二章:指し示すこと、物語ること
丸若裕俊×沖本ゆか もののものがたり #2|自在鉤/唐津焼の器
おいしいものにはわけがある #2|「ジャンボ」のお好み焼きと焼きそば
絵本のはなしはながくなる #2|近藤那央さんの選ぶ、不思議ないきものたちに出会える絵本
ひとりあそびの(おとなの)教科書 #2|東映レトロソフビコレクション──石ノ森章太郎と戦後サブカルチャー的身体
[フォトエッセイ]走るひとたち|上田唯人、高山都、宇野常寛