在野の哲学者である戸井田道三が青少年向けに書いた自伝的エッセイを44年ぶりに復刊。母親との死別、結核などの大病、関東大震災での朝鮮人虐殺と、辛い経験の中から「わたしが生きてきたのは、生きたというよりむしろ、ただ死ななかっただけなのだ」と思考する。そして、「生きのびているだけで、それが手柄だよ」という恩師の言葉を引き合いに出し、「生きることの意味」について語った内容。解説:鷲田清一
[目次]
自分と他人はとりかえられない
大事な、十四、五歳
最初のハードル
大森海岸でのこと
母の死
チイちゃんのひとこと
小学一年生のころ
母のない子の熱海
「おまえのためにびりだ」
いじめっ子のアブヨシ
田舎にあずけられて
犬を飼えない生活がある
水中に浮く変な感覚
四季のうつりかわり
父の結婚
『立川文庫』におそわって
新しい母
波音のとまる瞬間の深さへ
病気もわるいとはかぎらない
悪い本ときめたがるのは
死の淵からもどった目にうつるものの美しさ
試験は誰のためにある?
ゆれる大地、関東大震災
気のすすまぬ転校
流されたうわさ
ツネさんの絵
あとがきにかえて
解説(鷲田清一)