畑の中の
野うさぎの滑走
一匹のトカゲが
焼けた石の上を
過った
―昭和・平成・令和を、笠井叡と共に生きる―
この本は、2008年3月12日から2021年8月31日までの、毎日書いたり、書かなかったり、自分の子どもの頃を思い出したり、その日、目にとまった新聞記事だったり、庭の草木の様子だったり、海外ツアーで出会った人たちのことだったり、気に入った詩句や言葉だったり、過去も未来もなく、今、私の頭に浮かんだことを、笠井叡と共に歩みながら、自由気ままに書き記した、まったく手入れをしていない雑草だらけの庭のようなものです。
――本書 まえがき より――
〇笠井久子(かさい ひさこ)
1944年東京に生れる。立教大学日本文学科卒業。
昭森社に入社、「本の手帖」「詩と批評」等の編集に携わる。
68年舞踊家笠井叡(あきら)と結婚。
71年「天使館」創設に関わり、制作を担当する。
80年渡独。
85から86年シュトゥットガルトのキリスト者共同体祭司ゼミナールに参加。86年帰国後今日まで、笠井叡及び天使館の公演の全ての制作に関わる。
ルドルフ・シュタイナー著『神殿伝説と黄金伝説』を高橋巖、竹腰郁子と共訳(国書刊行会刊)。
舞踏家、笠井叡を語る上で、忘れてはならない存在が令夫人、
笠井久子さんである。妻として、よき理解者として公私にわたり
笠井舞踏を支えてきた。華奢で、病弱でありながら、
三人の立派な息子を育て上げた強い母でもある。
その笠井久子さんの人生の集大成とも言える本書には、
舞踏黎明期の秘話から、ドイツやイタリアでの日々、舞踏のみならず
オイリュトミーや人智学など、笠井叡とともに生きた時間のなかで
深められた思索が久子さんならではの詩的な美しい言葉で綴られている。
人生の何気ない瞬間を愛おしむその仕種。生きることの奥義がそこに覗く。
立木燁子(舞踊評論家)
〇 判型:127×188/総頁:378頁/製本:並製
〇発行:合同会社 蛤(ハマグリ)
〇編集:蛤(金谷仁美+葛城真)
〇本文デザイン:坂本陽一
〇装丁:片山中藏