さっと買って、さっと作って、この上なく幸福になれる。「トーストを焼くだけ」からはじまる、日々の小さな創造行為。おいしさと創造力をめぐる、全くあたらしい理論&実践の書。“面倒”をこえて「料理したくなる」には、どうしたらよいのか。“ほぼ毎日キッチンに立つ”映画研究者が、その手立てを具体的に語る。目標は、素材から出発して、ささっとおいしいひと皿が作れるようになること。1週に1章、その週の課題をクリアしていけば、26週=半年で、だれでも、すすんで自炊をする人=自炊者になれる、がコンセプトの本。感覚を底上げする、「名曲」のようなレシピを40以上収録。より先へ進みたくなった人のための懇切丁寧なブックガイド付き
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レシピを覚えたり、技術を学んだりする以前に、料理したくなるのでなければ、そもそも自 炊は始まりません。始まったとしても、楽しめず、つづけるのがむずかしくなります。
本書は、どうすれば料理したくなるかについて考え、一緒にその答えを探ってゆきます。
料理したくなる料理とは何かを理解し、楽しく自炊しつづけるようになることが目標です。
大きな方針をお伝えします。
「風味の魅力が私たちを動かし、料理したくさせる最大の動機である。本書はそう考えます。「風味の魅力」とは何か。それが本書の問いです。(…)
「風味の魅力」についての理解を深めながら、それを最大限に楽しむことのできる料理の作り方を、なるべく簡単なものから順番に、テーマごとにお伝えしてゆくのが、本書の構成の特長です。あわせて、日々の台所での作業を快適に進めるための方法を、ステップごとに示します。
料理をすることにまだ興味が持てないという方に、この本を読んでほしいと思います。読んでいただければ、料理の何が楽しいのかを理解していただけるでしょう。
どこから始めていいかわからない方に読んでいただきたいと思います。自炊の全体像を直感的につかんでいただけるでしょう。買い物のしかた、調理法の初歩、おいしい組み合わせ、即興のしかた、片付け、うつわ選び、さらには環境問題にいたるまで、自炊に関わる大事なポイントをできるだけ網羅しました。読みやすさにも心がけたつもりです。
料理はある程度できるけれど、楽しむことができないという方に読んでいただきたいと思います。ささやかでも、心の奥底から感動することのできる料理が作れるようになるでしょう。
いつもとちがうアイデアを探しているという方もぜひ。
本書は、一週に一章を読み進めていただくよう書かれています。各章でレシピを一つ(あるいはいくつか)取り上げています。そのほとんどは、失敗しようがないくらいシンプルに作れて、なおかつ、風味の楽しみを満喫していただけるものであるはずです。時間がある日に試してください。全部で26章=26週間。約半年です。すでに料理経験のある方は、もっとハイペースで進んでいただくのがよいでしょう。最初に通読し、少しずつレシピを試す、という使い方でも結構です。
すべてを通過し終えたとき、あなたはすすんで自炊するひと=自炊者になっています。
――「序 料理したくなる料理」より