奈良県東吉野村にひっそりとたたずむ「ルチャ・リブロ」は、自宅の古民家を開いてはじめた私設の図書館。このルチャ・リブロの司書が綴る、本と図書館の仕事にまつわるエッセイ。人と接するのが苦手で、本という「窓」から外の世界と接してきた。そんな著者が自らの本棚を開放することで気づいた「図書館」の本質的な効用。精神疾患を抱える「支えられる立場」から、司書という「人を支える立場」になりえた体験を通じて、司書の仕事の豊かさ、奥深さ、そして本という「窓」の持つ力が伝わってくる。読むと訪れてみたくなる、ある個性的な図書館の物語。写真・宗石佳子。
【目次】
■1 司書席から見える風景
不完全な司書
本という窓
古い家で、いとなむこと
蔵書を開くことは、問題意識を開くこと
ルチャ・リブロの一日
公と私が寄せては返す
窓を眼差した人
時間がかかること、時間をかけること
諦めた先の諦めなさ
ペンケースを開け放つ
森から来た人達
知の森に分け入る
葛根湯司書
図書館への道
ルールとのつきあい方
偶然性と私設図書館
夜の海の灯り
■2 クローゼットを開いて
クローゼットの番人が、私設図書館を開くまで
幽霊の側から世界を見る
当事者であること、伴走者であること
絶対あると思って探しに行かないと見つからない
探求のお手伝いが好き、レファレンスブックが好き
カーテンに映る影
本と暴力と
光の方へ駆ける
窓外に見えるもの
旅路の一里塚
明るい開けた場所に出られるような言葉
■3 ケアする読書
デコボコと富士正晴
書くことのケア性について
「分からない」という希望
生きるためのファンタジーの会
木炭で歯をみがくことと、オムライスラヂオ
私の影とのたたかい
背後の窓が開く
「土着への処方箋」のこと
「本について語り合う夕べ」のこと
■4 東吉野村歳時記
峠をのぼるひと、のぼる道
屋根からの手紙
とんどと未来
馬頭観音祭と、往来と