
20世紀エストニアを代表する作家、アウグス・ガイリ(1891 - 1960)の1928年に書かれた全7話から成る短編連作集。一つ一つの話が読み切りで独立しているが一つの世界観で構成されている。
主人公の風来坊トーマス・ニペルナーティは、エストニアの村々を気ままに旅してまわり、土地の人々と深く関わり騒動を巻き起こす。ある意味詐欺師で、旅の先々で農園主、沼さらい、靴職人と様々な職業を詐称をしてまわっている。馬鹿げた夢のようなことをぺらぺらと真顔で語り、出会った女の子たちから疑いの目を向けられても意に介せず、ときにその女の子たちから慕われもする男。ただし自らの虚言によって立ち場を危うくし、最終的に居場所をなくすという意味で、社会的な落伍者でもある。
人間の美しさと醜さをコミカルに描く、奇妙にして驚くべきニペルナーティの7つの旅の物語。
第1話 筏乗り(いかだのり)
第2話 ノギギガスの3兄弟
第3話 真珠採り
第4話 白夜
第5話 テリゲステの1日
第6話 幸せの2羽のブルーバード
第7話 シバの女王
著者のアウグス・ガイリは、後期ロマン主義のエストニアの作家。リガ(現在のラトビアの首都)でジャーナリストとなった後、従軍記者を務める。19歳で作家デビュー。