文学が世界文学に遷移していく時代にオースターはどのような位置をもち、そこにはなにが尽きていたのか、『孤独の発明』からニューヨーク三部作、『ムーン・パレス』、『偶然の音楽』、あるいは『幻影の書』、そして『4 3 2 1』へ……証言は交錯し、作品は残される。知られざる作品をいまふたたび馴染みの風景とするために。追悼とはそれを取り戻すための哀惜と反抗である。渾身の追悼特集
目次
❖翻訳
ローレル&ハーディに人生を救われた――『4 3 2 1』より / ポール・オースター 訳=柴田元幸
❖対談
オースターを/とともに読む / 柴田元幸 藤井光
❖作家との邂逅
内面の旅に魅せられて / 白井晃
矛盾する僕のお守り / タダジュン
❖アメリカからの旅
ポール・オースターの思い出とアメリカにおける彼の著作の評判について少々 / ジャスティン・ジャメール 訳=秋草俊一郎
間違い電話じゃなかった / 吉田恭子
空白期間の神話から二一世紀の段階的物語へ――ポール・オースターと歩く現代アメリカ / 矢倉喬士
「翻訳」の発明――柴田元幸のポール・オースター訳をめぐって / 邵丹
❖作られたお話
初訳者の栄光と困惑 / 郷原宏
シンクロニシティ、あるいはご都合主義の復権 / 菱岡憲司
❖憑在的な声
探偵になりきれなかった男たち――ポール・オースターと(ハードボイルド)探偵小説 / 井上博之
ガラスの手荷物――シリ・ハストヴェットとともに『最後の物たちの国で』声を聞く / 上田麻由子
幽霊たちへの責任――ポール・オースターにおける災厄の表象 / 髙村峰生
ボディーズ・アンリミテッド――オースター作品における肉体考 / 小澤英実
❖場所が訪れる
点、線、面 / 畔柳和代
オースターの「必然」 / 姜湖宙
❖詩と物語、あるいは言葉
混乱と残忍に抗して――ポール・オースターの詩 / 飯野友幸
偶然の技法――ポール・オースターの詩人から小説家への移行期について / 佐藤直子
寂しさの発明――オースターとメルヴィル / 古井義昭
神託の夜と再話の倫理 / 大宮勘一郎
❖文章を追いかけて
ベケットが結んだポールとジョンの友情 / くぼたのぞみ
オースターと野球と、逃げる犬 / 高山羽根子
❖オースターと――
孤独の発見 / 鈴木創士
ポール・オースターとパウル・ツェラン――ゴッホを通して二人を架橋する / 関口裕昭
「失われた原稿」と「失われた対話」――ポール・オースターとピエール・クラストルをめぐって / 酒井隆史
稀代のストーリーテラーが映画に注いだ情熱の行方 / 上原輝樹
❖事の始まり
ポール・オースター全小説解題 / 下條恵子
❖忘れられぬ人々*34
故旧哀傷・松尾和子 / 中村稔
❖物語を食べる*41
かーいぶつ、だーれだ、という声(上) / 赤坂憲雄
❖詩
あのこと・のと・なりで / 川上雨季
❖今月の作品
湖中千絵・蓮野健二・栫伸太郎・禾アキラ・岡村梨枝子 / 選=井坂洋子
❖われ発見せり
その〜…あいだになる、そのあいだに / 外島貴幸
表紙・目次・扉=北岡誠吾
表紙写真=2007年10月11日、パリにて。映画監督作『マーティン・フロストの内なる生』の上映に際して(Photo by STEPHANE DE SAKUTIN)AFP/アフロ