井上青龍(いのうえ・せいりゅう)は1931(昭和6)年、高知県生まれ。20才の頃より写真家岩宮武二に師事し、一貫してドキュメンタリー写真を志向した作家です。労働者の街である大阪・釜ヶ崎を撮影した『釜ヶ崎』や新潟で朝鮮民主主義人民共和国に渡る在日朝鮮人を追った『北帰行』、奄美・徳之島での人々の生活を取材した『奄美』など社会性の強いテーマを持った作品で知られています。また森山大道など多くの写真家たちに影響を与えた。彼の代表作《釜ヶ崎》を中心に収録。終戦後の高度成長期にさしかかる50年代後半、日雇い労働者が集まる大阪の釜ヶ崎に住み込み、そこに生活する人々の日常を記録したシリーズ。
小島一郎(こじま・いちろう)は1924(大正13)年、青森県生まれ。故郷の青森を拠点に北国の風景を撮り続けた。写真家の父のもと幼い頃より写真に親しみ、中国から青森に復員した53年頃より本格的に津軽や下北半島を撮影しはじめ、名取洋之助との出会いで一時は上京するが、常に北国をテーマに作品を撮り続けた。津軽半島の日本海に面した十三村の撮影について「何ものをも失い、白い大地にへばりついている姿、それはそのまま私自身の姿のようでもあり、あるいは又生きようとする人間の執念の姿なのかもしれない」と語ったように、敗戦後の焦土と化した故郷青森を目の当たりにし、それでもなお東北の厳しい風土の中で力強く生きる人々の生命力に取り憑かれた小島の写真は、今でも見る人に強烈な印象を与える。10年と短い写真家活動の中で残した作品の中から《津軽》を中心に収録。