
約1年半ぶりとなるカタリココ文庫の新刊は、ミュージシャン・中村佳穂と大竹昭子の対談。ジャンルも世代も異なるふたりに共通するのは「空間」への関心。ライブの際には必ず会場の下見を行うと中村が述べると、確かにあなたの音楽には空間を感じる、と大竹が応答、そこからさまざまなトピックが引き出されていくようなやりとりが展開される。油絵を描いていた中村が自分の軸は音楽にあると認識する10代のこと、日本語でポップスを作り、歌うことの難しさ、「音楽は自己表現ではない」という言葉の意味など、これほど深く自分のことを語ったのは初となった希有な一冊。いまの時代をどう生きるかという難問に直面しているあらゆる人々にとって、励ましの書