
日本人の食生活に不可欠な小麦。しかし国民全体に普及したのは戦後のことである。その背景には、第二次大戦と朝鮮戦争を経て膨大な余剰小麦を抱えるようになったアメリカと、戦後復興の中で安価な食糧と開発資金を必要としていた日本の思惑の一致があった。われわれは輸入小麦にいかに依存するようになり、その陰で米はどう扱われてきたのか。NHKディレクターが関係者の証言や資料から戦後食糧史の空白に迫った貴重な記録。文庫化にあたり、トウモロコシなど飼料穀物の対日市場開拓を追った補論「それは小麦だけではなかった」を収録。食料安全保障を考えるうえで必読の一冊。 解説 鈴木宣弘
【目次】
日本人の胃袋を変えた男たち
ワシントンの意図 〝余剰小麦を売りこめ〟
霞が関の思惑 〝食糧と外資の一挙両得〟
日本市場開拓計画の立案
小麦キャンペーン始まる
ハードな販売作戦への転換
粉食大合唱の中で勝利宣言
いま アメリカ小麦は……
あとがき
補論 それは小麦だけではなかった
文庫版あとがき
解説 胃袋からの属国化(鈴木宣弘)